小説家デビュー

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小説家デビュー

昔々、お爺さんが山で光る竹を発見した。何かと思い斧で切ると、何と中から親指程の男の子と女の子が出てきた。お爺さんが2人の子を家に持ち帰るとお婆さんは大変喜び、老夫婦は女の子を竹姫、男の子を一寸太郎と名付け、育てる事になる。 光陰矢の如しとはこの事だろう。3ヶ月もすると、竹姫は成人女性ぐらいまで成長し、その美貌は村中の男性から求婚される程で、隣街まで噂された。 だが、一寸太郎は全く大きくならず、村の皆からチビだとイジメられ、村を出ていく事になってしまった。 竹姫は、この国の王様に美貌を気に入られ、城で働く事となった。だが、この城のプリンセス姉妹の意地の悪さというのは半端では無かった。城の作業を全て竹姫にさせるというイジメの毎日……。 ある日、この辺りで最も力のある城のイケメン王子が竹姫の噂を聞きつけ訪れた。プリンセス姉妹は竹姫を隠し、自分こそが竹姫だと嘘をついて王子にアピールしたのだが、王子は「顔を見れば分かる」と竹姫を出すよう一喝した。 竹姫と王子は幸せに暮らすのかと思いきや、竹姫は王子からのプロポーズを受け入れなかった。しつこく求婚してくる王子を諦めさせる為、鬼を倒して打出の小槌を持ってくれば婚約すると無理難題を押し付けた。 そこで登場したのが一寸太郎だった。彼は村を出た後、鬼をバッタバッタとなぎ倒し、打出の小槌を持ち帰って竹姫にプロポーズしたのだ。 竹姫は一寸太郎と婚約した。彼は村の男性達を見返す事が出来たのだ。しかし、直ぐに婚約破棄を告げられた。背の低い男に興味は無いという無茶苦茶な理由で。聖女とも言われる素晴らしい性格の竹姫が何故そんな事を言ったのか? 実は、竹姫は月からの使者で、地球で1年間過ごした後、月へ帰らなければいけなかったのだ。地球にいられるのもあと数日……。光陰矢の如しとはこの事だろう。一寸太郎に悲しい想いをさせられないという苦渋の決断だったのだ。
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