返却不可

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返却不可

 目を伏せて身じろぎ一つしなくなる美都を見て、吉良は表情を緩めた。  美都が自分で言ったように、わざわざこうして鍵を返すことを理由にしてまで、会いに来たこと。料理が食べられなくなるのが悲しいと言ったこと。それは、期待以上の答えだった。……現時点においては。  今は、もらえる返事として、これで十分。ただ、伝えておくべき事は伝えておかなければ。 「百瀬さん。……前に、俺、いろいろ覚悟の上で誘ったって言いましたよね」  美都の肩がぴくりと震えた。  会社なんか別に辞めてもいい。金で解決出来ることなら、いくらでも払う。それは今も変わらない。 「でも、一つ覚悟できないことがあるんですよね。それ、聞いてもらえます?」  その問い掛けに、緩慢に美都がこちらを見る。僅かに不安げな色が混じった。 「この間、百瀬さん、セックスレスが解消されたって言いましたよね」
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