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もう、子供じみた駆け引きや、この人の気持ちを試すような真似はしない。そんな段階はとっくに過ぎたし、逆効果でしかない。
吉良は立ち上がり、テーブルの上のカードキーを拾い上げると、そのままチェストに向かった。引き出しから目的の物を取り出し、カードキーに手を加える。
それを持って、美都の隣に腰掛けた。
「もう、返却不可です」
前回、美都にカードキーを渡した時のように手を取り、そこに握らせる。
カードキーには、油性ペンで『モモセ』と書かれていた。
美都はそれを見ると吹き出し、
「書いちゃったの?……返却するとき、困るでしょ」
と吉良を見上げて笑った。
久しぶりに見た、美都のほころんだ顔。
思わずこぼれた自然な笑みから目が離せなくなる。
考える前に、美都の唇を自分の唇で塞いでいた。
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