第一章「宮廷へご招待」

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第三話「宮様暗殺計画」 *** 「かなり近づいてきたかな……」  目指す綾城まではかなりの道のり。  そもそも暮らしていた家が森の山奥にある。数時間で着く話ではない。  結月にも疲労の色が見えてきていた。  綾城での宿を取りたいと考えていたが、手元には5000フォルしかなく、また綾城の物価がいまいちわからない結月に取っては不安しかなかった。 「おい、あれって……まさか手配書の……!」  結月は後ろから聞こえる声に反応した。 「そうだよ! 手配書の【二刀使いの結月】で間違いない!!」  『手配書』という言葉に結月は疑問を覚えて振り返る。  結月が振り返るとそこには質素な服装の男が二人いた。 「振り返ったぞ?! 捕まえるか? 手配書でみた感じよりひ弱そうだしいけるんじゃないか?」  『ひ弱』いう声に少しむっとした結月。 「【二刀使いの結月】! 覚悟して捕まれっ!!」  結月に向かって鍬(くわ)を持って襲い掛かってくる。  しかし、そのような村人の動きを止めるのは結月にとって造作もなかった。 「いてててててっ……!!」 「いたっ!」 「いきなり襲ってきたのは褒められたことではありませんね。私には手配書に載るようなことをした覚えはないのですが、どのような手配書だったのですか?」 「いてっ! 話すから放してくれ!」 「いいですけど、逃げようとしたらまた捕まえるだけですからね?」 「わかった」 「……つい二日前に綾城の手配板にあんたの名前とその特徴が貼ってあったんだ。罪状は宮様の暗殺未遂だよ。連れてきたものは宮廷から100万フォル支払われると」 「なっ! ひゃくっ……!」  結月は言葉にならなかった。暗殺未遂にも覚えがなく、また手配書で100万フォルかけられた話など聞いたことがなかった。 「わかった。教えてくれてありがとう。とりあえず、私は暗殺未遂はしていない。そしてあなたたちに捕まる気もない」 「へ? そうなのか? まあ、実際俺たちにはあんたを捕まえる力はないから諦めるよ」  意外とあっさり信じる村人。  その村人を見送ろうとした結月。 「じゃあ、気を付けてかえ……」  その時、結月は首に衝撃を感じた。  しかしながら、その衝撃の理由を知ることもなく、結月は意識を失った──
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