吾輩は猫じゃらしである

11/23
前へ
/23ページ
次へ
 そして翌朝、事件は起きた。  ハルカの家へ向かうため、店員が籠を持ってきた。  外に出る前、いつも猫たちを入れる籠である。  他の猫は数匹起きていたが、ネコタロウはまだ寝ていた。  店員がネコタロウを抱き上げると、抱えられていた吾輩は、前足の間からするりと抜けて、ソファに落下した。  眠っているネコタロウは、丁重に籠に入れられ、格子の嵌まった蓋が閉じる。  今度こそ、お別れだ。  ハルカの家へ行けば、ネコタロウは戻ってこない。  これまでとは違う。  いよいよ、本当のお別れなのだ。  もう噛まれることもない。  傷だらけにされることもない。  夜中に延々舐められることだって、夕べが最初で最後だ。  ああ、せいせいする。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加