吾輩は猫じゃらしである

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 そして翌朝、事件は起きた。  ハルカの家へ向かうため、店員が籠を持ってきた。  外に出る前、いつも猫たちを入れる籠である。  他の猫は数匹起きていたが、ネコタロウはまだ寝ていた。  店員がネコタロウを抱き上げると、抱えられていた吾輩は、前足の間からするりと抜けて、ソファに落下した。  眠っているネコタロウは、丁重に籠に入れられ、格子の嵌まった蓋が閉じる。  今度こそ、お別れだ。  ハルカの家へ行けば、ネコタロウは戻ってこない。  これまでとは違う。  いよいよ、本当のお別れなのだ。  もう噛まれることもない。  傷だらけにされることもない。  夜中に延々舐められることだって、夕べが最初で最後だ。  ああ、せいせいする。
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