吾輩は猫じゃらしである

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 音に気が付いたのか、籠の窓からネコタロウがこちらを見た。  蓋に嵌められた格子を、前足で何度も引っ掻いている。  ここから出せと言わんばかりに、何度も何度も。  たったの一鳴きもしないくせに、最後の最後まで、うるさいやつである。  吾輩も口が利けたなら、猫の言葉を話すことができたなら、呆れながら言ってやりたい。  ええい、うるさい。  吾輩は猫じゃらし。  人間が猫と戯れ、あやすための道具である。  ただのオモチャである。  生きものだけでなく、物にも寿命はあるのだ。  他の猫が壊したオモチャを、見たことくらいあるだろう。  今の、吾輩のような。
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