吾輩は猫じゃらしである

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 気が付くと、目の前は閉ざされていた。  吾輩は何かに覆われ、包み込まれているようだ。  うっすらと温かい。  物音はするが、賑わいはなかった。  吾輩が生まれた工場でも、並べられた用品店でも、猫の店でもないのだろう。  今までにない気配であった。  壊れたオモチャが如何様に処分されるか、吾輩は知らない。  これが初めての体験である。  折れた辺りにある違和感が、これから待ち受ける最期の時を予感させる。  いよいよ、年貢の納め時という訳だ。  折るでも砕くでも、好きにするがいい。
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