吾輩は猫じゃらしである

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 吾輩は猫じゃらしであるからして、人間の手によって猫に差し向けられるのであるが、実のところ、それは中々の大儀である。  この店に暮らす猫は、みな訳ありの連中で、路肩で身を潜めていたり、人間に放棄されたものばかりなのだ。  ゆえに、人間の用いる吾輩、猫じゃらしなる道具に覚えのない者も多い。  気性の荒い者には蹴られ殴られ、人間を恐れる者には無視をされ、誰にもロクに相手にされないまま1日を終えることも稀ではない。  用品店を去った後、他の同族たちがどのような生活を送っているかは知る由もないが、大して差はないように思う。  我々は道具であり、オモチャなのである。  丁重に扱われる猫でも、その猫を養う人間でもない。  吾輩は、しがない一介のオモチャに過ぎないのである。
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