吾輩は猫じゃらしである

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 ネコタロウは、ご多分に漏れず、どこぞから拾われてきた身である。  どこで生まれ、どのように生きてきたのかは不明だが、まだ年端もいかない幼い猫であった。  だが、ネコタロウは他の者とは異なる、不可思議な猫であった。  一切声を発さず、鳴かないのだ。  他の猫たちは、飯時になれば店員を急かすために鳴き、客を相手におやつをせがんで鳴き、またある猫は警戒心を露わに鳴き声を発する。  ネコタロウは、これらの行動を全くせず、口を開くのは飯時と欠伸くらいという、珍しい性分をしていた。  客がガサゴソと立てる物音や、鈴の入った球を目で追うことから、おそらく耳は聞こえているものと思われる。
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