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鳴かない代わりか、何かにつけて吾輩の柄を噛む癖がある、まさにクセモノの猫であった。
時に食事の後、時にブラッシングの後、起きてすぐ、眠る前。
思い立ったが吉日とばかりに、棚の前のソファに、ぴょんっと飛び乗っては、2段目のオモチャ箱から吾輩を引っ張り出して、心行くまで噛んでくる。
数秒の時もあれば、数十分離さぬ時もあったし、噛みながら、ソファでそのまま眠ることすらあった。
痛覚がなければ噛まれても良いという訳ではない。
痛くなくとも、しょっちゅう噛まれるのは御免である。
吾輩の傷だらけの体を見れば、いかに迷惑を被っているか、一目瞭然のはずだ。
同じ日に店に来たという因果だけで、こんなにボロボロにされては、堪ったものではない。
吾輩にとって、猫はある種の商売相手、客であるが、ネコタロウに限っては、同時に天敵でもあった。
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