吾輩は猫じゃらしである

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 ネコタロウは、小柄な体と、それに負けぬ大振りな挙動から、すぐに店の人気猫になっていった。  が、貰い手が現れることはなかった。  店には、客が気に入った猫を引き取ることのできる制度がある。  様々な審査を受け、店の許可が下りれば家に招き、試しに数日、生活を共にする。  そして、猫と客、双方が納得すると、その猫は晴れて、正真正銘の我が家と家族を獲得するのである。  人気を博したネコタロウは、当然、引く手あまたであった。  幾人もの客が店に通っては、おやつやオモチャで機嫌を取り、意気揚々と家へ招いた。  しかし、ネコタロウは必ず店へ戻ってくる。  どの家へ行っても、そこに居つくことはなかったのだ。  そうして戻ってきては、またオモチャ箱から吾輩を引っ張り出して、飽きるまで噛むのだった。  毎度毎度、勘弁してほしいものである。
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