オルナス バトルカーニバル

1/1
前へ
/66ページ
次へ

オルナス バトルカーニバル

朝、東と通学路で合流する。 取り留めのない会話をしながら、毎朝と同じ道を歩いていく。 「アキト!アキト!」背後から大きな声で名前を呼ばれる。振り返れば美鈴が大きく手を振りながら笑顔で駆け寄ってくる。いつの間にか呼び捨てされるようになってしまったが、正直満更でも無かった。 「おはよう美鈴ちゃん、朝から元気だね」東がいる手前、少し抵抗があったが、軽く片手をあげて挨拶を返す。 「また、ちゃん付けで呼ぶ…」彼女は不服そうな顔をして頬を少し膨らませる。 「美鈴、おはよう」東が前髪を弾きながらポーズを決める。 「南君もおはよう、でも気分悪いから呼び捨てにしないでね」無表情のまま、東の顔も一別もしなかった。 「俺…、先に行くわ…」相当なダメージを受けたらしく東は目頭を赤くして走っていった。やはり、可愛い顔をしたサターンである。 「東…!」俺には彼を癒やす術はなかった。 「アキト、そんな事よりこれを見て!」美鈴が鞄からなにやら紙を取り出した。 「これは!?」紙を受け取った俺は少し目を見開いた。 第二回 オルナス バトルカーニバル開催 「大会があるみたいよ。アキトもチャンピオンなんだから出場するよね」美鈴は目をキラキラと輝かせている。 「えっ!…いや…俺達は…」返答に躊躇する。 「俺達…?」美鈴が少し不思議そうな顔をして見つめる。 (アキト、出よう!)頭の中にギルの声が聞こえる。 (何だよ、急に?)ギルが積極的に参加したいと言うとは予測していなかった。 (見ろ!優勝賞金…!) 「500万円!?」俺は食い入るように見る。 「そうなの、びっくりでしょう!きっと私が物にしてみるわ」美鈴は拳を天高く振り上げた。 (これだけあれば母上様に、少しは楽をさせてあげられるだろう)ギルのテンションが高い。コイツ、俺より親孝行だなと感心する。 「ちょっと、これ出場申し込みの締め切り…」 「そう、今日までよ」なんと急な…。 「じゃあ申し込みしなくちゃ」申し込み方法を確認する。 「大丈夫よ、私とアキトの分申し込んでおいたから!」なぜか出来る女のように光を放っている。 「なんじゃこりゃ!」彼女のスマホを覗き込むと、そこには大鐘明人(おおかねあきと)そして、オルナスの名前は、ギルガメシュと記されていた。 「うーん、ギルは私が勝手にリングネーム付けといたわ」なんだか恩着せがましい言いぶりであった。 「ギルで…、ギルガメシュ…、安易な…」俺は頭を抱える。 「いいでしょ!格好いいでしょう!?」 「そうだね…」俺は力尽きたような答えを送り返した。
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加