模擬戦

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模擬戦

「行くわよ!リン!!」如月が威勢よく声をあげる。リンは機械体操の選手のように華やかに舞い上がりギルに向かって蹴りを放つ。 (ギル!本気になるなよ!)俺はリングを通してギルの思考に語りかける。 (解っっている)ギルは、軽く身を捻りリンの蹴りをかわした。着地と同時に足払い、ギルはジャンプ。その空中に浮かんだ彼の体に向けて後ろ回し蹴りが襲いかかる。 「えっ!?」予想だにしなかった攻撃に俺は少し度肝を抜かれる。 「実は私、空手を少しやってたのよ!」マスターの格闘技技量もオルナスの動きには影響がでる。ただ、リンのその動きは少しという動きではなかった。 ニヤリ リングを通して、ギルの気持ちが少し弾んでいるような気がした。 (ギル!) (解っている。しかし、この間の大会に出てきた並のヤツより、よっぽど強いぞ!この女!)頭に流れ込んでくるギルの声は嬉しそうであった。 「避けてばかりいないで、少しは攻撃してきたらどう?」如月が牽制してくる。攻撃的なヤツだと、俺は少し退いた。 「よし、ギル!少しやっちゃってもいいぞ!!」売り言葉に買い言葉。 ギルは掌を開いてリンの胸を突いた。それはまるで中国拳法の達人のような動きであった。ギルは、インターネットで様々な格闘技の技を習得している。弾かれたリンは、勢いよくギルの顔面めがけて蹴りを発射する。ギルはそれを右腕で受け止めると流すように下に落とした。それは熟練した空手家のような動きであった。 「やるわね!もしかしてアキト君も空手やってたの!?」 「ああ、少しだけね…」全くの嘘です。 「やっぱり戦闘モードは楽しいね!」会話をしながらもリンの攻撃は止まない。 ギルは、彼女の体を傷つけ無いように加減しながら反撃する。コイツ紳士なんだなと感心してしまった。 ベルの鳴る音がした。 オルナスの競技ルールでは、6分間の制限が普通であった。 「凄いよ!如月さん!かなり練習したのかい?」俺は前のめりになって聞いた。彼女はオルナスの戦闘で興奮したのか少し汗ばんでいて息を弾ませていた。 「うん!私の事は美鈴って呼んでいいよ!」満面の笑みを投げかけきた。 その瞬間、俺はフリーズしてしまったのであった。
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