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Extra episode. 01
「帰って来やがったなクソ野郎」
早くも懐かしい会話に頬が綻ぶ。
喧々諤々といがみ合うふたりは最早微笑ましい。
今年のGW休暇は火水木が祝日なので、稜さんと私は金曜日に合わせて有休を取得している。そして月曜日は一日だけ久しぶりの研究所に出勤する予定だった。
そこで約ひと月ぶりに顔を合わせることとなった稜さんと宇野さんは、早速痴話喧嘩にも似た口論を始めるので、周りからは生暖かい視線を向けられている。
「うっせえ、見たくもねえ面晒すな変態野郎」
「こんなイケメン捕まえて何言ってんの?まじ迷惑だから眼科行け?」
「自意識過剰なんだよ馬鹿じゃねえの」
「片桐、俺格好良いよな?超イケメンだよな?」
「…まあ格好良いですけども」
何故私に話を振るんだ、と嘆いた。
わざと稜さんに見せつけるように気安く肩を組んでくる宇野さんに呆れてしまう。露骨な嫌がらせを受けた稜さんは酷く剣呑な目付きで宇野さんを睨み付けた。
「…セクハラしてんじゃねえよ」
「別にこんぐらい普段通りだよなあ?片桐ィ?」
「いやまあ、そうですけど…」
「生真面目で堅物ぶってるいずみーるに教えといてやるけどな、セクハラってのは相手が不快に感じた瞬間に認定されるわけ。俺と片桐の絆なめんなよ?」
「…うるっせえ死ね!」
稜さんの語彙が死んでいて不憫だ。
その明晰な頭脳をまったく活かせていない。
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