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文字通り粉骨砕身働いているんだろうことが見た目から察せられて胸が痛んだ。帰国した時は目の下の隈も酷くて、睡眠を削らなければいけないほど忙しいなんてと不安になる。
それなのに私に会いに来るために無理をしてくれたという稜さんの言葉に、安直に喜んでしまう自分がいる。犠牲の上に成り立つ恋愛がこんなにも苦しいなんて知らなかった。
「別にそれはいいだろ、素直に喜べば」
「でも…」
「アイツの頑張る理由が今はお前に会いたいって感情なだけだろ?最高じゃん」
どうしてだろう?
宇野さんの軽やかな言葉はいつも私を救う。
不甲斐ない妹を甘やかすようによしよしと頭を撫でてくれる宇野さんを、私がセクハラで訴える日は永遠に来ないだろう。
「真面目過ぎんだよ、片桐も和泉も」
「負担になりたくないのに、会いたいんです…」
「そんなもん好きなんだから当然だろ?言っとくけど絶対和泉も同じこと考えてるぜ、だからお前のために無茶すんのはアイツにとってちっとも苦痛じゃねえんだろ」
心の棘がひとつひとつ丸くなる。
宇野さんの優しさは、いつだって温かい。
稜さんには悪いけど、こんな風に可愛がってくれる宇野さんのことが私はどうしたって大好きだ。
視界がじわじわと滲み始めたのに慌てて上を向けば、青空を背負った宇野さんの笑顔が見える。春と夏の隙間に風が吹く。
爽やかなその笑顔は、残念ながら格好良くて。
思わず見惚れてしまった。
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