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「おかえりなさい」
ホテルの部屋の扉を開ける。
そこには私より遅い帰宅の稜さんが立っていた。
長期休暇の前に軽く顔を出すだけだと今朝までは言っていたくせに、結局稜さんは夜の十時を過ぎてから部屋に帰って来た。
「ただいま」
「随分と遅かったですね」
「なんかアメリカの研究内容の共有だなんだで話し込んでたらいつの間にか」
「夜ごはんどうします?何か買いに…」
「そんなん後でいい」
部屋に入るなり抱きすくめられる。
驚きながら背中に腕を回せば、稜さんは深々とため息を吐いた。
「ちょっと充電させて」
「え、大丈夫ですか?そんなに疲れました?」
「お前のせいでな」
「私?」
そんな、何か問題を起こしただろうか?
身に覚えがなくてきょとんとすれば、首筋に埋めていた顔を上げた稜さんが不満げにじとりと睨み付けてくる。
「お前、宇野と仲良すぎねえ?」
「またその話ですか」
「距離近すぎると思うんだけど、あんま気安く触らせてんなよ」
「あれは稜さんへの嫌がらせでしょ?」
「そっちじゃねえわ」
「わっ」
唐突に体を抱き上げてきた稜さんは、相変わらずその細腕のどこにそんな力が隠されているのかと思うほど力持ちだ。
そしてそのままベッドメイキングの済んだシーツの上に投げ捨てられた私は、粗雑な扱いに不満を溜めながら、自分の上に乗り上げてくる稜さんを睨み返した。
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