Extra episode. 01

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座った状態の稜さんの上に跨ると、私の顔の方が珍しく高い位置に来る。見下ろされるのには慣れているけれど、その端正な顔を見下ろす視界には慣れない。 戸惑う私を余所に、一度引き抜いた昂ぶりをまた中に沈められるとそれだけで感じてしまう。目の前にある稜さんの筋張った首筋に泣きながらしがみついた。 「そんな抱き着かれると動けないんだけど?」 「稜さん、おねが、ゆるして…」 「嫌だわ」 腰を掴まれ、下から奥をグっと突かれる。 もうそれだけで達しそうだ。 自分ですら把握していない体の隅々までを暴かれてしまっているこの状況で、私に勝ち目などあるわけもない。 自分に絡みついた私の腕をぞんざいに振り解いて後ろで拘束した稜さんは、そのまま腰を動かして下からの抽送をひたすら繰り返す。 狂ってしまいそうな享楽の波にただ襲われ続けた私がどれだけ泣いても、彼は愉快気に口端を持ち上げるばかりで、少しも責める手を緩めてはくれない。 電気も落とされていないホテルの部屋にはオレンジ色の煌々とした灯りが満ちている。そんな中でこんな風に醜態を晒すのはあまりに自分が滑稽で痛ましい。 音のない静かな夜の中に卑猥な水音と涙に濡れた女の喘ぎだけが木霊した。そんな倒錯的な空間の中で満足げに笑っている稜さんの、どこが理性的だと言えるだろう?
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