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でも、少しも怒っていない自分が馬鹿みたいで。
どこまで稜さんに懐柔されてるの。
稜さんはそんな私に気付いているように、また唇を重ねながら、片手間で灰皿に煙草の吸殻をこすりつけている。
そのまま裸の上半身がベッドの上で覆い被さってきて、さっきの贖罪みたいに、丁寧に優しく私を甘やかして抱き締めてくれる。
「だってむかついたんだよ」
「ねえ、私の身にもなってもらえます?」
「嫌だよ」
責める方が性に合ってるし、なんて笑う。
悪びれる様子もないその顔に呆れながらも愛おしくて、結局許してしまう。
「宇野さんと仲良くしてくださいよ」
「まじで今その名前出すな、普通にイラつくわ」
「なんて心の狭い…」
「悪いけどそういう男なんでな」
宇野さんの名前を出しただけで物騒に眉を寄せている稜さんは、どこまでも大人げない。
普段の冷静な立ち振る舞いからは想像もできない彼のこの姿を知っている人は、この世界にどれくらい存在するのだろう?
出来る限り少ないといいな。
なんて、思っている時点で私の負けなのだ。
「あんま馴れ馴れしく触らすな」
「あまり自信はないですが善処します」
「まじでさ、遠くに置いてく俺の身にもなれよ」
「そんなのお互い様です」
生意気を言う私に稜さんはあからさまに不機嫌な顔をして、でもそれ以上は何も言わずに、壊れるほど何度もキスをした。
自分の中に取り込むかのように隙間もなく私を抱き締めるその腕の力に拘束されながら、ふと頭を過る尊大な考察に、深いキスの狭間で笑みをこぼす。
ねえ稜さん、もしかして。
貴方も結構私のこと、好きだったりしますか?
──Extra episode.01
Fin.
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