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「また泣かれそうなので言いません」
「そんな奔放だったんですか?」
「まあでも付き合った人数で言えば片手に収まるぐらいじゃねえの?」
「付き合ってない人の数は?」
「んなもん当然それ以外の73億人だろ」
「誤魔化しましたね、今」
普段真面目ぶったこの人には、有村さんという前歴があることを私はもちろん忘れていない。
そして宇野さんからの補足情報によれば割りと恋愛面には無頓着らしいと聞いている。じとりと疑り深い視線を向けたものの、どこ吹く風でそっぽを向かれた。
「てかお前は宇野と普段何喋ってんだよ」
「最近は基本恋バナです」
「まじで頼むからやめろ何でよりにもよって宇野とそんな話してんだ」
「結構的確なアドバイスをくださるので」
「勘弁しろよまじで…」
朝日の差し込む部屋の真ん中で稜さんが項垂れている。そんな表情がなんだか面白くて、ベッドの上に腰掛けている彼の横に座り、横からきゅっと抱き着いた。
「そんな具体的な話はしてませんよ?」
「逆にどんな話してんだよ」
「稜さんから連絡が返ってこないとかですね」
「それはシンプルにごめんだわ」
連絡不精だと公言する稜さんは、付き合ってから驚いたけれど、本当に必要事項以外の連絡を寄越してくれない。
本人曰く『文面で書くと本日の業務日報みたいになる』そうだ。そんなものを仕事終わりの疲れた夜に打つのは嫌らしい。代わりにと時々電話は掛けてくれる。
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