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トレーを持った稜さんがカレーパンを乗せる傍らで悩む。二個買うにしてもこの品目だと稜さんの言う通り両方固いパンなので、なんだか顎が疲れそうだ。
細身の体で意外にもよく食べる稜さんは、他にもカツサンドとソーセージフランクをトレーの上に乗せている。ラインナップがまるで部活帰りの高校生みたいだと思った。
「弥生、決めた?」
「明太子フランスの方にします」
「一個だけでいいの?絶対あとで腹減るだろ」
「なんかもう一個は甘いの買おうかな」
「弥生って甘いもん好きなの」
「普通には食べますよ」
特別甘党というわけでもないけれど、例えば食後のデザートに甘い物が出てくれば普通に喜ぶ程度にはスイーツも好きだ。
「まあ俺も好きでも嫌いでもねえけど」
「意外ですね、甘い物も結構食べるんですか?」
「そんな頻繁には食わないしアホほど生クリーム乗ってんのとかは嫌だけど、チョコとかなら普通に食うよ」
「なるほどですね」
結局お互いの食の好みもあまり知らない。
そんな状態で始まった遠距離恋愛には、もちろん不安の影が多く付き纏うけど、でもそれは発想を変えれば、今はまだ知らない余白がたくさんあるということだ。
未知との遭遇はいつだって胸躍る。
余白の中の稜さんは、どんな姿をしてるだろう?
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