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「日本はまじ何食っても美味くて感動する」
「アメリカはやっぱり大味ですか?」
「だな、あと量が毎回エグいからさすがにげんなりする時あるわ」
「稜さん意外に結構食べるのに」
「なんかもうレベルが違うよな、向こうは」
「私は絶対暮らせないですね」
「弥生は見た目通りあんま食わねえもんな」
私は昔から食は細い方だ。
量を食べずとも満足できて燃費がいい。
結局明太子フランスと小ぶりのチョコクロワッサンにした私は、一緒に買ったブレンドコーヒーと一緒にパンを流し込む。
「夕方まで何します?」
「どうせまた行きたいとこはないんだろ?」
「それに今日なんかどこ行っても大混雑で余計なストレス溜まる気がしますよ」
「確かにそれも一理あるな」
「まあのんびり考えましょうか」
焦る必要なんて、少しもないのだ。
今のこの優しく穏やかな時間をひとつひとつ積み上げた先に、寄り添い合う未来があることを願うしか出来ないのだから。
この先もきっと、沢山傷つくだろう。
離れ離れで過ごす時間の中で、悲しみに暮れる日も、寂しさに飲み込まれる日も数限りなく降り掛かるだろう。
けれど冷たい雨に濡れる私に傘を差し出してくれるものがあるとすれば、それは今こうして紡いだ愛おしい時間の記憶だと思う。
香ばしいパンとコーヒーの香りに包まれた優しい朝の風景を、窓から差し込む朝と昼の間の光に透けた彼の白い頬を、私はこれからも幾度となく反芻して。
そして私は何度だって。
性懲りもなくこの恋を、選び続けるだろう。
──Extra episode.02
Fin.
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