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Extra episode. 03
今夜は稜さんがいない。
会社の同期会に参加する予定なのだ。
事前にそのことは伝えられていたので、私も葉月と飲みに行くことにしていた。何の因果か同時期に人生ではじめての恋人が出来た私たちは、これまた同じタイミングで遠距離恋愛をスタートさせた。
「葉月の彼氏さんも今帰って来てるんでしょ?」
「そう、今日は向こうも別の飲み会」
「なんか私たち、暇な日が被ってよかったよね」
「わかる」
ひとりでホテルの部屋に置き去りにされると絶対に寂しい思いをすることが目に見えている。そんな時に似た境遇の旧友にその穴を埋めてもらえるのは有難い。
秋葉原近くの居酒屋はGWの只中なこともあって混雑を極めている。そのテーブル先に腰掛けた私と葉月は、最初のビールを傾けながらだらだらとお喋りに興じていた。
「でも羨ましい、二週間もこっちいれるんだね」
「そうなの、仕事も兼ねてるから」
「それはアドバンテージとして大きいね、瞬さんも仕事でも帰ってくるらしいけど」
「でも同じ会社にいるのとじゃ少し違うもんね」
「ロシアだと日本の暦関係なしなの」
「うわ、それ辛いね…」
稜さんも向こうで働いている間に関してはアメリカの暦で動くけれど、日本への帰国などはこちらの休暇に連動させることが出来る。そこは唯一出向の利点かもしれない。
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