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こんなに可愛い私の友達を日本に置き去りにして働いてばかりだなんて、進藤瞬さんというらしい葉月の恋人は随分な強心臓だ。私なら葉月を繋ぎ止めておくのに必死で絶対に仕事が手に付かないと思う。
「何それ?私は浮気なんてしないもん」
「でも不安だよ、もし私が今葉月に片思いしてたら絶対責め時だって息巻くから」
「そんなの言い出したら弥生も同じでしょ?」
「私は残念ながらモテませんし」
「それ本気で思ってるの弥生だけだよ…」
「そんなことないよ」
その証拠にこれまでの人生に彼氏なんて素敵な存在はこれまで誕生しなかった。稜さんにも散々不慣れを揶揄われた私は、それに関してはもう諦めている。
どう足掻いたところでこれまでの人生を書き換えることは出来ないし、さらに愚かなことに、私は初めてを全部稜さんで埋められることに幸せすら感じている始末だ。
「私、男に生まれ変わって弥生と付き合いたい」
「でも葉月になら靡いちゃうかも」
「何で女に生まれちゃったんだろう?弟のこと見てる限り私も男に生まれてたら結構いい線行った気がするのにさあ」
「私のお兄ちゃんも女誑しだったよ、学生時代」
「啓司さんでしょ?ほんとに過去形?」
「で、あると信じてる」
三十路を過ぎても未だに女性関係にだらしがないなんて妹としては看過し難い。高校から大学に掛けての啓司は軽蔑すべき恋愛遍歴を積んでいたけれど、さすがにそろそろ落ち着いてくれないと困る。
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