1844人が本棚に入れています
本棚に追加
終わったふたりに今さらこんな悋気を焦がして何になるというのだろう?これが不毛なことは痛いほど知っているのに、勝手に溢れる感情の前に成す術もない。
意味もなくぎゅっと枕を抱き締める。だけど無機質なそれはぶっきら棒に私を抱きしめ返してくれることもないし、揶揄うようなキスをくれることもなくて。
大事にしてくれていると、わかってる。
私に会いに来るために無理をしてくれたという稜さんを、ちゃんと信じてる。
でもそれとはまったく別の場所で矛盾した情動が湧き出してしまう。誰かを自分のものにしたいなんて身勝手な願いを叫びそうになって、そんな自分を嫌いになって。
恋は綺麗なものなんかじゃない。
稜さんに恋をしてから嫌というほど思い知った。
「お、まだ起きてた?」
結局稜さんの帰宅は十二時を過ぎていた。
煙草とアルコールの匂いをプンプンさせた稜さんは、出迎えた私の頭を機嫌良さそうに撫でながら部屋に入ってくる。
「楽しかったですか?」
「あー…、まあ普通にそこそこ?」
「なら良かったです」
上手に笑えているだろうか?
今にも引き攣りそうな頬に神経を集中させながら笑うのは、酷く疲れる。けれど稜さんはそんな私に気付く様子もなく「風呂入ってくるわ」と浴室の扉を開けた。
最初のコメントを投稿しよう!