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Extra episode. 04
別れはいつの時代も悲しい。
そんな当然のことを、今思い知っている。
GWの休暇を抜けると当然のように世界は日常を取り戻す。職場に稜さんがいることに違和感を覚えてしまうのが悲しいのに、変化は常に容赦なくそこに鎮座する。
「最近暗くてウケんだけど、片桐」
例の如くひとりでお弁当を開いていた私の前に現れた咥え煙草の宇野さんは、悪戯な笑みを口元に広げた。私はそれに返す言葉もなくむすりと唐揚げを口に運ぶ。
「明日だろ?和泉が帰んの」
「…嫌なこと思い出させないで下さい」
「そもそも忘れてねえだろ、顔に出てんだわ」
「普通に働いてますもん」
「雑念振り払おうとして逆に処理能力上がってんのはまじで片桐だわ」
「…だって、仕方ないじゃないですか」
アメリカでの実験データの報告業務や共有事項の確認などに関する仕事をつつがなく終えた稜さんの帰国が明日に迫っていた。
明日は木曜日なので私は空港まで見送りに行くことも出来ない。今夜は絶対に泣く気がしてる。稜さんにまた困った顔をさせてしまうことが今から憂鬱でならない。
「泣け泣け、遠距離なんかさせてる和泉が悪い」
「そんな、和泉さんは仕事なのに…」
「あのな、男と女が付き合って女が泣くならそれは男が全部悪いんだよ。少なくとも男側はそういう意識でいろよと思うね、俺ってばフェミニストだからさ?」
ふふんと居丈高に鼻を鳴らす。
そんな姿も様になるのだから宇野さんは狡い。
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