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これからも苦難の道は続くだろう。
寂しさに身を焦がす夜に、何度も出会うはずだ。
だけど私はどうしようもない女だから、稜さんに待っていてと言われたら、きっと馬鹿みたいに何年でも待ち続けてしまう。
涙とともに続いてゆくこの恋を、私はそれでも抱き締めて離せない。この茨の道の先にしか望んだ未来はないと知っているから、何度だって泣くしかないのだ。
「…待ってる、から、帰ってきて、くださいね」
「今の、もう撤回すんのナシな」
「稜さんこそ」
鼻先が触れそうな距離でそんなことを囁き合う。
普段の調子を取り戻したように見える稜さんの瞳は僅かに挑発的だ。なんだか泣かされっぱなしなのが今さら悔しくなってきた私も、その黒い瞳を見つめ返した。
「男に二言はナシですよ」
「悪いけどあんなこと、もう二度と他の奴に言える気してねえわ」
「稜さんに捨てられたら泣いちゃいます」
「今でも散々泣いてんだろ」
どの口が言ってんだ、と私の頬をゆるく抓った稜さんこそ何様のつもりなんだろう?こんなに私のことを泣かせるのは、後にも先にも貴方だけだというのに。
ねえ稜さん、わかってますか?
こんなに泣くのは貴方が好きだからなんですよ。
「知ってるわ、だから責任取るんだろ」
こんな時まで偉そうに嘯く稜さんが照れ臭そうに顔を顰めるのを見ながら、妙にちぐはぐなその仕草に甘く胸が鳴る。
飛行機が飛び立つまであと十数時間。
さあ夜を掻い潜って、みっともない恋を紡ごう。
──Extra episode.04
Fin.
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