Collaboration

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「確かに、国境もクソもないもんな」 「一応宇宙条約ってのがあるけど全然具体性がねえからさ、確か2015年あたりにアメリカが法整備を初めて開始したぐらいで」 「国の領有が禁止なら個人はどうなんのそれ?」 「そこが曖昧で、だから漬け込まれる」 「まあそうだよな」 顔を合わせてすぐ同い年であることが発覚してからは即敬語を撤廃したふたりは、気安い調子であれこれと会話を交わしている。普段触れることのない分野の話だから余計に面白いのだろう。 私は稜さんが同年代の人と対等な立場で喋っているところを見るのが意外と少ないので、なんだか妙に新鮮で、そして稜さんと同じ頭の回転速度で会話をする進藤さんに密かに舌を巻いた。 稜さんはあの通り優秀なおかげで社内でも特別扱いされがちだ。だからおのずと、仕事をする時に同じ視座で話せる相手となれば、経験のある年上の人になってくる。 けれど今、こうして話しているふたりはまるで仲の良い同期入社組のメンバーみたいだった。お互いの知識を吸収し合って、それが面白くて仕方がないというような、微笑ましい結束感が芽生えている気がした。 「帝和だとロケットは大型のが主流なの?」 「国との連動が多いから主流はそっちだな、でも最近は内製化も進んでたし小型もある」 「今の会社だと小型になんだろ?」 「ああ、資金力でまず手ぇ出しようもねえしな」 「ゆくゆくはでけえの作りたいわけ?」 「もちろん」 デカいほうが格好良いだろ?と得意げに笑う。 進藤さんの無邪気な笑顔を葉月が横で少し呆れたように、けれど酷く眩しそうに見つめている。それを横目に、私と稜さんは肩越しにこっそりと視線を合わせた。
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