1. 秘密の時間

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1. 秘密の時間

「お月様もまだ眠れないの?  今日はいつものお星様と一緒じゃないのね」 エイミーはいつも21時に、パパとママに おやすみのキスをしてからベッドに入る。 しかし今夜は、今日あった楽しかった事を 思い出したり、明日は何をしようか考えて いるうちに、頭が冴え渡ってしまった。 枕元の時計は21時30分を差したところ。 そんな、なかなか眠れない夜のエイミーの 楽しみは、パパとママに内緒で、そっと ベッドの横にある出窓を開け、お月様や お星様とおしゃべりをして過ごす事だった。  今日もエイミーは窓辺に頬杖をつき、 窓に小さな明かりを灯した家々を優しく照らす ハンモックのような三日月お月様を眺めながら 秘密の時間を楽しんでいた。  エイミーの部屋は2階の角部屋でカントリー 家具で揃えられている。 エイミーの一番の宝物は、 3歳の時から習っているピアノ。 このグランドピアノはパパのおじいさんと おばあさん(エイミーはグランパ、グランマと 呼んでいる)から7歳の時に買ってもらった ものだ。 エイミーは、弾くだけで気分がハッピーに なれる「スペインワルツ」をママと並んで 連弾をするのが大好きだった。 ピアノの横には、 1歳のエイミーが水遊びをしている写真。 グランパとグランマにぺちゃんこになりそうな くらい、抱きしめられている写真。 2年前から飼っている犬のラッキーに顔中を 舐められている写真が、かわいい木の実の 付いた写真立てに入れられて壁に掛けられている。 そして、パパがお得意の日曜大工で作って くれた、二人がけの長椅子に、ママが作って くれた色々な柄のパッチワーククッションが 2つ置かれている。  エイミーは、お月様のあたたかい光を体中に 浴びているうちに、だんだん眠くなってきた。 「ごめんね、お月様。今日は先に寝るね」 そう小さな声で言って、 フカフカのベッドに潜り込んだ。
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