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「葉月さあ、俺はお前と離れても全然平気だとでも思ってんだろ?」
「そ、れは…」
「余裕なんかクソほどもねえよ」
手加減もなく抱きしめてられると、まるで私に縋られているみたいに思えて、胸の奥からじりじりと甘い痺れが沸いた。
ねえ、瞬さん。
私、少しは自惚れてもいいですか?
「私と離れてる間、寂しかったですか?」
「…当たり前だろ連絡も来ねえし、このままフラれんのかなとか考えたわ」
「瞬さんもそんなこと思うんですね」
「うるっせえよ」
俺のこと何だと思ってんだ、と恨めしそうにするその双眸は、まるで思い通りにいかないことに癇癪を起こす小学生のようだ。
不本意そうで、でも主張はやめたくなくて。
そんな葛藤が透けている瞳。
「…今のは酔って出た戯言にしとけ」
「ふふ、わかりました」
「むかつく顔してんじゃねえよ」
私の頬を無遠慮に掴んだまま、くわえ煙草で不満そうな顔をしているのが可笑しくて仕方がない。
私がなかなか笑うのをやめずにいると、我慢強さではかなり劣位な瞬さんは、すぐに耐え切れなくなったらしい。
「そういうとこが可愛くねえ」
そう言いながら私を押し倒すと、ようやく見慣れた光景に調子を取り戻したみたいに見えて、本当に最低だと思う。
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