EPILOGUE

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「でも案外いいな、こういうの」 「こういうの?」 首を傾げれば、今度は額に唇が落ちてくる。 屈託のない瞬さんの声が笑った。 「帰ってきたら葉月がいてさ、こんな風にくだらないことだらだら喋って、多分俺、これからこれしに日本帰ってくるわ」 特別な意味なんてどこにもなさそうに、私が一番欲しい言葉を、こんな風にふとした瞬間にくれる。 女心なんて何もわからない唐変木のくせに、大事なところだけは絶対に外さなくて、狡くて最低なのに、好きで好きでほんとに参る。 ねえ、今すごいこと言ってるの、わかってます? それ、貴方の帰ってくる理由が私って意味だよ。 どうせ何も考えてないんでしょう? 「…今そんな赤面する要素あった?」 意味がわからないと言いたげに首をひねる瞬さんに、こういうところが彼がモテてきた要素なのかな?なんて思ったら、なんだか無性に腹が立ってきて。 動物のマーキングみたいに、 その剥き出しの綺麗な肩に噛み付いてやった。 𓂃𓂃𓍯𓈒𓏸𓂂𓐍◌ 𓂅𓈒𓏸𓐍 「最終日かあー…」 今日は瞬さんの最終出社日だ。 何故かオフィスではなく喫煙所でしみじみし始めた彼は、かなり厳しさの和らいだ弥生の風に短い髪を揺らした。 「正直全然そんな感じしねえな」 「引継ぎ無事に終わってよかったですね」
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