EPILOGUE

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「お、ロマンスを始めたのかい?」 オフィスに戻ると、ほとんどの書類を新しい部署のオフィスに移動したおかげで、がらんとした部屋の中に教授がいた。 「…何で部外者が勝手に入れんすか」 「治外法権を持っているからね」 「常務の職権乱用でしょ、まじでそれだけは」 「残念ながら地位と権力は理不尽に行使するためにあるんだよ」 「最低な理屈だな」 ため息をついた瞬さんが教授の座っていたデスクの向かいに腰を降ろす。私はひとまず三人分のコーヒーを給湯室から用意してきて、それぞれの前に並べた。 「悪いね、ありがとう」 「進藤さんの餞別に来られたんですか?」 「わざわざ出向いてやったというのに本当に可愛げのない男だよね」 「まあ…」 まあそれは正直、そうですね? 苦笑いで首肯を返した私に満足そうに頷いた教授は、マグに手を伸ばす。左手薬指には教授のロマンスの跡が今も佇んでいた。 「嫌味言いに来たんすか?」 「そこまで暇じゃないさ、だたお前にまだ言えてない言葉があったのを思い出してね」 教授がコーヒーを一口飲み込む。 教授にしては珍しく次の言葉までに息をつくような間が置かれた。瞬さんは少し不思議そうに目を瞬いて、椅子の背もたれに預けていた背中を起こした。 「今までありがとう、向こうでも頑張りなさい」
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