EPILOGUE

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天の川銀河とアンドロメダ銀河は衝突後、一旦はお互いの存在をすり抜け、遠ざかる過程で引き延ばされ、そして歪みを発生させ合いながらも最後には融合する。 でもそれはこの地球上で起こるちっぽけな出会いだって同じかもしれない。誰かと誰かがぶつかり合った瞬間、弾け飛ぶような未来がきらきらと瞬き始める。 私たちはこれから一度すり抜ける。 だけどもしかしたら、またお互いの重力によって引き戻されるかもしれない。 そしていつかの未来でそんな日に巡り合えたら。 今度はきっと、永遠だよね? 「空っぽですね」 瞬さんが日本を発つ日の朝、業者に頼んで荷物を全部処分してもらった彼の部屋に、管理人に鍵を返すために立ち寄った。 最後にちょっとだけ部屋を覗こうか、とすっかり馴染んだ部屋の扉を開けると、当然のことながらそこには空き部屋があるだけだ。 「うわ、なんか後戻りできねぇ気がしてきた」 「もう帰る場所もありませんね」 「まじか…」 瞬さんは珍しくショックを受けている。 何だか今さら過ぎる気がするけど、この人の場合は決断が速すぎて、覚悟は後から決めるタイプならしかった。 「でも見に来てよかったわ」 「いよいよって感じしてきましたね」 「ああ、なんか腹括れた」 とりあえずロシア語頑張るわ、と頼りないことを言っているけど、瞬さんはどうせ大丈夫だから。 彼のバイタリティと行動力があれば、どんな苦境に立たされようと道を切り開いていける。それは瞬さんの下で働いた私が誰よりも知っていることだ。
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