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「再会のハグぐらいどこでもやってるぜ」
「…はい」
葉月は照れ臭そうに俺の腕にしがみついた。
数多くの人々の再会を見届けるこの場所は恋人同士の抱擁ぐらいでは何も驚かず、誰もが無関心に通り過ぎてゆく。
「お前なんか痩せたんじゃねえの」
「瞬さんが私のこと放っておくからですよ」
「あ?誰が放っといたんだよ?」
「嘘です」
会いに来てくれてありがとうございます、と葉月が俺の腕の中から顔を出す。
はにかむその顔が可愛くて死ぬかと思った。
年甲斐もない凶行に及びかける自分をあと一歩のところで宥めすかし、ひとまず体を離した俺たちはシャトルバスに乗って新宿に出た。
その後は予約していたレンタカー会社で借りたプリウスにふたり分の荷物を詰め込んで、十時間フライトで酷使した腰に鞭打って、向かう先は軽井沢だ。
「驚きました、何でまた軽井沢ですか?」
「一緒に会社やってるメンツの中に中国人のボンボンがいてさ、そいつん家が所有してる別荘借りれることになって」
「え、すご!軽井沢に別荘ですか!」
「まじで中国と中東の金持ちだけはレベチ」
「あはは、確かにそうかも」
その友人の太すぎる実家は軽井沢の他にも世界各地のリゾート地に十個以上の別荘を所有しているらしくて、最早羨ましいのを通り越して唖然とした。
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