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さらには今回の立ち上げに関わる初期費用の投資に関しても、その友人の父親が経営している中国企業からの融資で様々なイニシャルコストを負担してもらっている。
「もう完全に頭上がりませんね」
「俺は日本の大企業の犬を卒業して、知らない間に中国の大企業の奴隷に成り下がったらしいな」
「人に飼われるのが好きなんですか?」
「実はドMだったのかも」
「馬鹿」
道中のドライブスルーで買ったスタバの色鮮やかなドリンクを啜る葉月が、呆れたように笑って俺の肩を軽く叩く。
俺は自分の分のアイスコーヒーを何気なく啜る。
残念ながら味の違いはわからない。
「でもいくら息子だからって宇宙開発なんて初期費用凄まじいでしょ?よく融資なんて受け入れられましたよね」
「そこはちゃんとコンペで勝ち取ったらしい」
「コンペ?そんなのあるんですか?」
「中国だからな」
日本と中国、ひいてはロシアやアメリカなどの決定的な違いは軍事産業に割く費用の莫大さだ。
宇宙工学は航空工学と密接な繋がりにあり、それは軍事産業にも直結する。そして大国で軍事産業のイニシアティブを握ることのメリットは計り知れない。
だからこそ中国企業は昨今その資金力を笠に着て宇宙産業への進出に乗り気だ。そこで得た技術を兵器の開発に応用する気があるとは、口が裂けても言わないが。
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