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「しゅん、さん…?」 「起こして悪い、まだ寝てていいよ」 ごめんな、と髪を梳いて頬にキスをした。 すると寝てていいと言った側から大きな瞳をぱちぱちと瞬いて、葉月は甘える子供のように俺の体に抱き着いてくる。 「瞬さんが泣いちゃうから起きる」 「俺がいつ泣いたんだよ?」 「昨日寝るのやだって子供みたいに泣きそうな顔してた三十路がいたけどなあ」 「お前の妄想だろ、それ」 「本当に身に覚えがないですか?」 まだ半分寝ぼけているくせに、この減らず口だけは相変わらずの通常運転らしくてうんざりした。 だが昨日の眠気のおかげで正常とは言い難かった言動をそう断じられてしまうと、身に覚えがあるだけに立つ瀬がなくて、まったく腹立たしいことこの上ない。 「あんまり三十路を虐めんな」 「普段散々馬鹿にされてる仕返しですよ」 「俺がいつお前を馬鹿にした?」 「記憶喪失ですか?」 ふふん、と勝ち誇った顔で笑う。 妙に幼いその仕種が、どうにも可愛くて参った。 真っ白なシーツの海の中で葉月の心許ないほどに細い体を抱き寄せる。まだ眠そうな目元にキスを落とせば、くすぐったそうに身を竦めながらくすくすと笑った。 「瞬さん、大好きですよ」 「…は?」 コイツは毎回唐突に何なんだ、と固まった。 そんな俺を今度は笑うでもなく柔和な眼差しで見つめた葉月は、淡く耳元を指で撫でながらこつんと額同士をぶつける。
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