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「私はね、傍若無人で身勝手に自分のやりたいことのために突き進んでいく貴方を好きになったから、だから、瞬さんには自由に好きなことをして生きて欲しいんです」
本気で恐ろしいな、コイツ。
俺なんかより、よっぽど肝が据わってやがる。
葉月と離れて恋愛を始めることに覚悟を持てずにいたのは、多分俺の方だった。自分の目的のために葉月の存在を蔑ろにしたような気がして、後ろめたさが拭えなくて。
「…まじでお前さ、死ぬほど良い女だな」
こんな情けない男には不釣り合いにも程がある。
もう笑えてきてしまった。
それでも愛しいこの恋人は何故か悪趣味にもこんな俺に惚れてくれているらしいので、傍若無人で身勝手な男は有難くその幸運を神にでも感謝しておくとしよう。
「男の趣味は悪いみたいだけどな」
「それは自覚してます」
「まあそのおかげでこうしてられんだから俺にすれば嬉しい誤算だけど」
夢のように甘いその唇を夢中で貪った。
考えてみれば昨日睡魔と疲労に負けた体力の貧弱な三十路男である俺は、折角帰国して、こんなにも無防備な恋人が目の前にいるというのに手も出していない。
柔らかな舌の感触を追い掛けるようにして咥内を堪能しながら、下着すら身に付けていない様子の危機管理の甘い胸元に指を這わせた。
分厚い遮光カーテンに朝日を遮られた紺色の部屋の中に、朝の清廉な空気とは裏腹な気配が立ち込める。鼻に抜ける葉月の息遣いが俺の中の劣情を容易に煽った。
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