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自分から離れておいてどこまでも独善的な思考回路に苛立ちすら感じながら、それを振り払うように腰を振る俺は人間と呼ぶにも烏滸がましいほど愚かだ。
それでも今この腕の中で溺れながら惑う愛おしい存在を手に入れたくて、みっともなく醜悪な征服欲という魔物に唆されている俺は、どこまでも滑稽だった。
「しゅ、んさ、―あぁっ…」
蕩けた顔で目尻からぽろぽろと涙をこぼしている葉月は、譫言のように何度も俺を呼んでいる。知らない間に下の名前で呼び合う違和感は感じなくなっていた。
律動のたびに必死で俺の背中にしがみつく葉月の爪が皮膚に食い込んだ。三十路にもなって余裕の欠片もない俺は、その痛みでやっと理性を保っているようなていたらくで。
本気でどうかしている。
俺は恋愛なんかに必死になるような男だったか?
そんな風に考えている時点で、結局俺は今まで相手の犠牲の上に成り立つ、自分だけに都合の良い線引きの中での恋愛をしてこなかったのだと思い知らされる。
そしてそれは本来の恋愛の姿ではないのだろう。
本当に、どこまでも不純な男だ。
𓂃𓂃𓍯𓈒𓏸𓂂𓐍◌ 𓂅𓈒𓏸𓐍
昼食は昨日買って来た食材でBBQだ。
鉄板の上でこんがりと焼けた肉をひっくり返してくれている葉月の口元に、タレにくぐらせた肉を持っていってやる。
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