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これらスペースデブリの総数は年々増加の一途を辿っている。さらにそれぞれが異なる軌道を周回しているために、現状回収が難しい状況に陥っていた。
その状況を打破すべく今回、宇宙産業開発事業部内で立ち上がったのが『スペースデブリ除去システム開発チーム』である。
その新チームの在籍者は、全部で三名。
しかし統括責任者に当たる奥井という男性社員は他の業務も兼ねており、ほぼこちらのオフィスには顔を出さない。
なので実質このチームには、私と。
そしてもうひとり。
「進藤さん、ちょっといいですか?」
私の呼び掛けに応じた彼は実に良い男だ。
残念ながら愛想は欠片もない無表情と整えられた黒い短髪、切れ長に鋭く光る黒い目はどこか冷淡な印象を受ける。
端正に整ったパーツが素晴らしい配置で小さな顔の中に収まっていて、女性からの支持率はかなり高そうな面差しだと純粋に思った。
さらにモデルにだってスカウトされそうな痩躯の長身は引き締まっていて、ダークグレーのスーツがよく似合う。これは元来色恋沙汰には疎い私でも思わず胸が鳴りそうだ。
「論文の添削をお願い出来ますでしょうか?」
「そっち置いといて、納期は?」
「明日中で構いません、あと今日のミーティングに関してですが、ふたりで進めておいてほしいと奥井統括が…」
「了解」
最低限の会話だけを終えて、進藤さんはさっと自分の仕事に戻っていく。
彼はここに、《何の仕事》をしにきたのだろう?
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