Shuttle.01:銀河

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私の直属の上司に当たる彼の名は、進藤瞬(しんどうしゅん)。 今期から私の上司になった三年先輩の彼は、昨年まだ入社五年目にして人工衛星部門でのシステム開発に携わり、その際に手掛けた内部部品の製品化を実現。 そして昨年度末に行われた全社総会では社内表彰を受賞し、兼ねてより希望していたロケット開発チームに異動するだろうという大方の予想を見事に裏切る形で、進藤さんはこの新設部署に配属された。 一応肩書きだけで言えば、チームリーダーに昇進してはいるけれど。 だけど、それにしたって謎すぎる人事だ。 「進藤さん、ミーティングの時間ですが」 「コンテンツ聞いてる?」 「いえ特には…」 「じゃあ今日はナシでいいんじゃない?特に俺ら打ち合わせることもないし」 「…はあ」 思わず空返事になってしまった私に気を悪くした様子もなく、「はいこれ」と今朝お願いしていた論文の添削だけ戻ってくる。 まだお昼過ぎなのに?と内心で思いながら慌ててお礼を述べた私は、進藤さんから差し出されたクリアファイルを受け取った。 完璧ね、相変わらず。 その美しい添削にうっとりとため息をついた。 同じ宇宙開発分野とはいえ、それなりに専門性の高い論文に赤字で修正を加えるなら、その内容に対する深い理解が必要だ。 大学の教授でも自分の専門分野から少し外れた論文を添削するときは、その界隈に関する調査が必要なので、それなりの時間を要する。 それをたった数時間で、ここまで完璧に。 普段一体どれだけ勉強してるんだろう?この人。
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