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「進藤さんと香坂ってどんなコンビだよ?」
貴志くんの声に思考を舞い戻る。
進藤さんとはそれ以来も必要最低限の会話を交わす以外は黙々とそれぞれの職務に励んでいる。そして説明を得られるのであれば私が一番この人事の謎を知りたい。
「進藤さん、半端ねぇよな?発想が柔軟な上に知識量も膨大だし頭の回転も早い」
「あ、そっか、貴志くんってこの前まで」
「同じチームの先輩だった」
財閥系企業の長男である帝和重工は上層部の覇権争いがいつの時代も激しい。それに巻き込まれる形で、今回の開発部門内の大規模な人事異動と配置換えも急遽決定した。
そんな渦中で私と進藤さんはスペースデブリ除去システム開発チームに異動になった。元々私は人工衛星内の頭脳である解析システム部門、進藤さんは衛星本体の小型化や軽量化に取り組む人工衛星部門に在籍していた。
そこまでなら総合職の職員であれば当然の話だ。
宮勤めのサラリーマンが自分の希望している部署に配属される方が幸運だ。それが叶わなかったからと文句を言う方が間違っている。
けれど、だ。
今回の場合はそういう単純な話ではない。
────…この新しく立ち上げられた、《スペースデブリ除去システムの開発チーム》そのものが問題なのである。
「で、その新チームとやらで今何してんの?」
貴志くんの問いに眉が寄る。
だって、私たちは何の仕事もしていないのだ。
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