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「仕事しないで何すんの…?」
「とりあえず暇すぎるから毎日ひたすら理論武装して論文書きまくってる」
「はあ?いやそれ香坂と進藤さんの無駄遣い過ぎじゃね?何でそんな部署に二人も有効人員裂いてんだよ」
「まあ私はともかくとしても進藤さんは去年表彰もらったんだよ?どう考えてもおかしい」
「香坂だっておかしいよ」
貴志くんの生意気そうなくっきりとした二重瞼の目が、僅かばかり怒ったように吊り上がる。
爽やかで可愛げのある人懐っこい性格の貴志くんは、今時風な面立ちのイケメンで、他部署の女性同期からの指示も厚い。
「ありがとうね、貴志くん」
「普通にそうだろ?俺らの代じゃ入社試験も香坂が一位だったし、去年までの解析部門でも成果上げてたじゃん」
「でも私の場合、目に見える成果は全然だし…」
「てかそんな部署何のために作ったの」
それは、私も一番不思議に思う部分だった。
オフィスとして工場内の一室を割り当てられた私たちは、まるで隔離されるかのように、その片隅に追いやられている。
その理由がまるでわからない。
──と、言うのは嘘で。
私に関しては、正直あれかな?と予想している。
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「シュミレーション?」
肩書きだけは我々のチームの統括責任者である奥井という男性職員は、一週間ぶりにオフィスに顔を出した。
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