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「成宮さん可愛いっすね、俺すげえタイプ」
「えっ?」
突然首を伸ばした彼と顔がぐっと近づいて、思わずびっくりして後ろに身を引けば、背後にいた甲斐くんにぶつかる。
「相変わらず節操ねえな」
「お前だって人のこと言えねーだろ?」
「いや俺は元々真面目だったろ?あと成宮は絶対ダメ、俺が口説いてんだから」
予想外の台詞に、私は余計に目を丸くした。
ひゅうっと口笛が響く。
冗談だとわかっていても、甲斐くんみたいに格好良い人にそんな風に言われると、免疫がなさに顔が赤くなってしまうから初対面の人の前でやめて欲しい。
「このあと打ち上げなんだ、甲斐も来る?」
「んー、俺は良いかな」
「ならまた今度ゆっくり飲もうぜ」
慌ただしくて悪いな、と甲斐くんの肩を軽く叩いた大倉さんは、最後に私にも目配せをしてから身軽に駆けて行った。
「なんかライブ終わっても忙しそうだね」
「まあバンドなんかデビューしてからがあちこち人脈作ったりで大変だからな」
「大倉さんとはどこで知り合ったの?」
「学生時代、対バンライブで一緒になったの」
「対バン?」
知らない用語に目を瞬いた。
対バンというのは、同じ日に数組のバンドが順々にそれぞれ曲を演奏していく形式のライブだと甲斐くんに説明してもらう。
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