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「待って、一緒に行こうよ」
「え?でもお店と会社、逆方向ですよ」
「俺とお茶したくない?」
「お茶?」
今からですか?と首を傾げると、いいからと背中をグイグイ押された。
珍しく強引な様子に驚きつつ流される。
そのまま流れ着いた駅前にあるカフェは、雑誌に特集されたらしい人気店で、昼下がりの店内は賑わいを見せていた。
「どうしたんですか?私仕事中なんですけど…」
「今週末って暇?」
「はい?」
予想外の質問に、思わず手が止まる。
アイスラテの氷がカランと涼しげな音を立てた。
「暇と言えば暇ですが…」
「週末に予定もないの?寂しいね」
「自分から聞いといてなんなんですか!そんなの私の勝手じゃないですか!」
「はいはい」
憤慨する私を適当にいなす酷い朝倉さんは、それでね、と先を続ける。
「ちょっと付き合って欲しいんだよね」
「どこにでしょう?」
「それは週末のお楽しみだよ」
とにかく空けておいてね、と勝手に予定を決めると、もう安心したのかリラックスした様子でアイスコーヒーを啜っている。
自由気儘な猫か、と頭を抱えた。
そんな情報だけじゃ身構えようもないんですが?
「行先ぐらい教えていただかないと困ります」
「変なとこには連れてかないよ」
「そうじゃなくてTPOに合わせた服装ですとかこっちにだって色々と準備が…」
「なら可愛くおめかししてきて」
「可愛くって…」
そんな漠然とした要望がありますか?
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