Music.05:逢引

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「待って、一緒に行こうよ」 「え?でもお店と会社、逆方向ですよ」 「俺とお茶したくない?」 「お茶?」 今からですか?と首を傾げると、いいからと背中をグイグイ押された。 珍しく強引な様子に驚きつつ流される。 そのまま流れ着いた駅前にあるカフェは、雑誌に特集されたらしい人気店で、昼下がりの店内は賑わいを見せていた。 「どうしたんですか?私仕事中なんですけど…」 「今週末って暇?」 「はい?」 予想外の質問に、思わず手が止まる。 アイスラテの氷がカランと涼しげな音を立てた。 「暇と言えば暇ですが…」 「週末に予定もないの?寂しいね」 「自分から聞いといてなんなんですか!そんなの私の勝手じゃないですか!」 「はいはい」 憤慨する私を適当にいなす酷い朝倉さんは、それでね、と先を続ける。 「ちょっと付き合って欲しいんだよね」 「どこにでしょう?」 「それは週末のお楽しみだよ」 とにかく空けておいてね、と勝手に予定を決めると、もう安心したのかリラックスした様子でアイスコーヒーを啜っている。 自由気儘な猫か、と頭を抱えた。 そんな情報だけじゃ身構えようもないんですが? 「行先ぐらい教えていただかないと困ります」 「変なとこには連れてかないよ」 「そうじゃなくてTPOに合わせた服装ですとかこっちにだって色々と準備が…」 「なら可愛くおめかししてきて」 「可愛くって…」 そんな漠然とした要望がありますか?
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