Music.05:逢引

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「わあ、とってもお似合いです!」 試着室のカーテンを開けると、それを待ち構えていたかのように早速店員さんが褒めてくれる。 試着させてもらったマスタードイエローのフレアワンピースは、膝下で揺れる裾のシルエットが綺麗で気に入った。 普段着にしてはちゃんとしているけど、そこまでフォーマルでもない。手持ちのパンプスと合わせれば今の季節にもちょうどいい気がする。 悪くないかもしれないな?と指で裾を摘まんで揺らしてみる。フレアの裾は女性らしさを象徴するようで昔から大好きだ。 「デートに着て行っても変じゃないですか?」 「どこに行かれる予定なんですか?」 「それが教えてくれなくて…」 あとデートとは名ばかりなんですが、なんて話をしたら変に話が長くなりそうだったので伏せたまま、店員さんの意見を仰ぐ。 「レジャー系でなければひと通り大丈夫かと」 「運動はたぶんしなさそうです」 「ある程度フォーマルな場かもしれないのであれば、少しゴージャスな小物を鞄に忍ばせておくと便利ですよ」 なるほど、確かにそれは便利だ。 店員さんに促されてイヤリングやネックレスの飾られた棚に移動する。できれば今後普段使いも出来そうな、華やかだけどシンプルな感じのものがいいな。 それにしても、週末はどこに行くんだろう? 行先も教えてくれないなんて酷い。 透明なショーケースの中に並んだアクセサリーを吟味しながら、ふと思い浮かんだあの美青年の顔に、声もなく愚痴をこぼした。
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