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「時々話題作を見る程度です」
「俺も」
週末だけ歩行者天国になる大通りを悠然と歩く朝倉さんは、眩しい夏の日の光がよく似合う。
意外にも上手に人波を縫って歩くその歩調が私には少しだけ早く感じた。置いて行かれないように小走りでついて行くと、朝倉さんがふと私を振り返った。
「最近世話になってるスポンサーが主催するリバイバル上映会があるらしくて、絶対出席しろって言われてるんだけど、こういうのって女性同伴が基本でしょ?」
「え、でも、枝光さんは?」
「普段は瀬奈を連れてくんだけど、今日は向こうにどうしても外せない用事があって」
「それで代役ですか」
「ご名答」
よろしく頼むね、と存外に簡単に種明かしをしてくれた朝倉さんに連れ立たれるように隣を歩く。
そうして向かった先は銀座にある古い小さな映画館で、収容人数は五百人ほどの小さな佇まいのそこは、時代の流れに置いて行かれたようにレトロな雰囲気が漂っている。
受付でスタッフの女性に招待状を見せた朝倉さんは、招待客用のパンフレットを受け取ると、それを私にも見せてくれた。
ダークブラウンの上質な紙に綴られた内容をふたりで読み込みながら、演目紹介の欄に、時代を感じる映画のポスターが小さく切り取られて載っていた。
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