10人が本棚に入れています
本棚に追加
4
生暖かいものが頬を伝った。それが耳の穴に入り込む不快さで目が覚めた。
「先生。被験者Aが目を覚ましました」
事務的な声が僕の耳に木霊する。
僕は、白い部屋の中で白い服を着て、頭に変なものをくっつけてベッドに寝ている。
「了解。今回の、地球滅亡時における人間の行動心理実験はこれで終了だ。かなり良いデータを手に入れられたぞ」
いかにも研究者っぽい男がそう言った。
年代別に無作為に選ばれた被験者たち。どうやら僕もその中の一人。信じたくないが、僕は自分の頭の中を丸裸にされてしまったらしい。
僕が見た夢のような時間はたったの一週間。世界滅亡の恐怖からは逃れられたものの、失ったものがあまりにも大きくて、僕の毎日は絶望という名に彩られていた。
「おーい! 静かにしろ。今から転校生を紹介するぞ」
突然担任がそう言った。
僕は頬杖をつくのをやめて、教壇の方に目をやった。
(あ……)
「はじめまして。俺の名前は谷龍斗……」
僕は彼を、彼は僕を、食い入るように見つめた……。
了
最初のコメントを投稿しよう!