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 生暖かいものが頬を伝った。それが耳の穴に入り込む不快さで目が覚めた。 「先生。被験者Aが目を覚ましました」  事務的な声が僕の耳に木霊する。  僕は、白い部屋の中で白い服を着て、頭に変なものをくっつけてベッドに寝ている。 「了解。今回の、地球滅亡時における人間の行動心理実験はこれで終了だ。かなり良いデータを手に入れられたぞ」  いかにも研究者っぽい男がそう言った。  年代別に無作為に選ばれた被験者たち。どうやら僕もその中の一人。信じたくないが、僕は自分の頭の中を丸裸にされてしまったらしい。    僕が見た夢のような時間はたったの一週間。世界滅亡の恐怖からは逃れられたものの、失ったものがあまりにも大きくて、僕の毎日は絶望という名に彩られていた。 「おーい! 静かにしろ。今から転校生を紹介するぞ」  突然担任がそう言った。  僕は頬杖をつくのをやめて、教壇の方に目をやった。 (あ……) 「はじめまして。俺の名前は谷龍斗……」  僕は彼を、彼は僕を、食い入るように見つめた……。                                                                   了
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