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プロローグ
光が消えていく。
彼らを闇の中に隠すように、一時の漆黒を迎えようとしている。
「ーーさあっ、今だ、あの森の奥へ、全力で駆けていけ……!!」
男性の力強い声に弾かれて、若い男女二人が走り出す。
女性の方は、走るには相応しくない、大きなお腹をしている。
背後から怒号が飛んできた。
二人は力の限り走り続ける。
森は二人を守るように、闇の中へと誘っていくーー。
もうこれ以上走れないーー…
そんな時、目の前に小さな木造りの小屋が現れた。
ーー背後に気配はない。
男性を先頭に、恐る恐る中へ入る。
そこは、古びた小屋だった。
どこもかしこもかなりホコリをかぶっているのを見るからに、しばらく誰も使っていないのだろう。
念のため隅々まで確認し、扉を可能な限り強固に閉ざす。
「すごいっ……! 水も出る……!」
水道の蛇口をひねった男性が喜びながら振り返ると、女性が突然うずくまった。慌てて近寄る。
それからしばらくの後ーー…
ーー小屋に、元気な赤子の声が響き渡った。
女性はその子を大切そうに抱きしめる。
男性も愛おしそうに、二人に寄り添う。
窓からそっと光が差し込む。
まるで二人の希望の光であるかのように、その小さな子を照らした。
母となったその人は、祈るように我が子を見つめる。
「ーーどうかあなたは、この暗闇を照らす星となって……!」
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