3-1★ 世界に隠された世界(1)

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「でも、そっか……どうしよう。私、一回うちに帰って手当してあげようと思ってたんです。お父さんが上手だから。だけど、森で迷子になってしまったみたいで……」 「星を治せるとしたら……」 急におじいさんの声が低くなる。 「“あそこ”しかないじゃろうなあ」 「“あそこ”……?」 おじいさんは穂詩歌の向かいのイスにゆっくりと腰掛けた。 さっきまでの微笑みとは打って変わり、真剣な面立ちを向ける。 「この森をさらに奥へ進むと、“エスペラール王国”に出る。そこの中央に立っているお城へ行けば……おそらく、力になってくれるじゃろう」 「エスペラール王国……?」 穂詩歌は首を傾げる。 そんな国、聞いたこともない。 そもそもここは“日本”と言う国だし、国の中に国があるだなんて聞いたこともない。 村や町ならともかく—— 「特別に、二人に入国を許可しよう」 ビシッとおじいさんが言った。 「へっ?!」 あまりの突飛な言葉に、穂詩歌はすっとんきょうな声を上げる。 おじいさんは構わず続ける。 「本来であればこの国……いや、この国が存在する“パ・ク・ステラ界”への出入りは禁じられとるんじゃ」 「あっ、あのっ! パ、クス……なんですか、それ?」 話にどんどん置いていかれそうで、穂詩歌は慌てて言葉を挟み込む。 「パ・ク・ステラ界……夢と希望、願いの世界じゃ。その昔、理想の世界を追い求めた人々が作った世界……行けばわかるじゃろう。……まぁ、一昔前に色々あったが……」 「え?」 最後の方はもごもごしていて聞き取れなかった。 「まあ、ともかく」 おじいさんは穂詩歌の返しには答えず、ハッキリとした口調で言い直す。 「夜の森は危険じゃ。今夜はここに泊まってお行きなさい。明日の朝、道を教えよう」 「はっ、はいっ……!」 総じてなんだかよくわからないけれど、穂詩歌たちは勧められるがままに布団に入り、そのまま眠ることとなった。 明日になったらもう少し何かわかるだろうか……。 穂詩歌の頭の中は色々なことがぐるぐると駆け巡っていて、どうにも眠れそうにない気がしていたが、いつの間にか夢の世界へと落ちていっていた。 結局アスは眠りにつくまでも、ずっと黙り込んでいたのだった——。
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