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「でも、そっか……どうしよう。私、一回うちに帰って手当してあげようと思ってたんです。お父さんが上手だから。だけど、森で迷子になってしまったみたいで……」
「星を治せるとしたら……」
急におじいさんの声が低くなる。
「“あそこ”しかないじゃろうなあ」
「“あそこ”……?」
おじいさんは穂詩歌の向かいのイスにゆっくりと腰掛けた。
さっきまでの微笑みとは打って変わり、真剣な面立ちを向ける。
「この森をさらに奥へ進むと、“エスペラール王国”に出る。そこの中央に立っているお城へ行けば……おそらく、力になってくれるじゃろう」
「エスペラール王国……?」
穂詩歌は首を傾げる。
そんな国、聞いたこともない。
そもそもここは“日本”と言う国だし、国の中に国があるだなんて聞いたこともない。
村や町ならともかく——
「特別に、二人に入国を許可しよう」
ビシッとおじいさんが言った。
「へっ?!」
あまりの突飛な言葉に、穂詩歌はすっとんきょうな声を上げる。
おじいさんは構わず続ける。
「本来であればこの国……いや、この国が存在する“パ・ク・ステラ界”への出入りは禁じられとるんじゃ」
「あっ、あのっ! パ、クス……なんですか、それ?」
話にどんどん置いていかれそうで、穂詩歌は慌てて言葉を挟み込む。
「パ・ク・ステラ界……夢と希望、願いの世界じゃ。その昔、理想の世界を追い求めた人々が作った世界……行けばわかるじゃろう。……まぁ、一昔前に色々あったが……」
「え?」
最後の方はもごもごしていて聞き取れなかった。
「まあ、ともかく」
おじいさんは穂詩歌の返しには答えず、ハッキリとした口調で言い直す。
「夜の森は危険じゃ。今夜はここに泊まってお行きなさい。明日の朝、道を教えよう」
「はっ、はいっ……!」
総じてなんだかよくわからないけれど、穂詩歌たちは勧められるがままに布団に入り、そのまま眠ることとなった。
明日になったらもう少し何かわかるだろうか……。
穂詩歌の頭の中は色々なことがぐるぐると駆け巡っていて、どうにも眠れそうにない気がしていたが、いつの間にか夢の世界へと落ちていっていた。
結局アスは眠りにつくまでも、ずっと黙り込んでいたのだった——。
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