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お城までの道はまっすぐに続いていたので、迷わずたどり着いた。
近くまで来てみると、思っていたよりも高さがあり、敷地も広かった。
「止まれーい!」
穂詩歌がお城の敷地に一歩踏み出そうとした時、門の両脇に立っていた兵士二人に足止めされてしまった。
「お主ら、何用だ」
門兵たちはそれぞれ一つずつ持った長くて大きな槍を斜めにかかげ、バッテンの形を作っている。
「あっ、えっと……、穂詩歌と、申します。こちらは流れ星のアス。彼は……ケガをしているのですが、お城に行けばきっと治してくださると伺ったもので……」
穂詩歌がたどたどしく説明すると、門兵の一人がフンッと軽く鼻を鳴らし、
「"アス"……。不吉な名だな」
低い声で吐き捨てた。
「まあ、良い。王にお目通りをお願いしてみよう。しばし待たれい」
「はっ、はい! ありがとうございます」
穂詩歌はペコッと頭を下げた。
門兵の一人が、近くにいた別の兵士を呼び寄せる。
呼ばれた方の兵士は、門兵たちよりも少しきらびやかな服装に見えた。
二人は何事か話していたかと思うと、きらびやかな兵士はお城の中へ走り去り、門兵は持ち場に戻った。
再びバッテンが形作られる。
「……良かったね、アス」
穂詩歌はそっとささやく。
「まだ会えると決まったわけじゃないよ」
アスはなぜかムスッとした調子で答えた。
「でもさっきの洋服屋さんや女の子も、王様たちは良い人だって言ってたし」
ほんのしばらくすると、さっきの兵士が小走りに戻ってきた。
サッと敬礼をする。
「お通しせよとのご命令です」
その声に、一人の門兵がうなずき、
「通れ!」
パッと二つの槍が開いた。
「ありがとうございます!」
穂詩歌は満面の笑みを浮かべ、深くお辞儀をした。
これでアスのケガを治せるかもしれない……!
お城の中から戻ってきた、少しきらびやかな兵士が一歩近づいてくる。
「それではこちらへ」
穂詩歌はアスを抱え直し、彼のあとを付いていった。
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