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仕方がないから今度は絵里や優奈をはじめ、クラスのみんなに話をしてみた。
きっとみんなも同じように思っているに違いないと思ったのだ。
だけどみんなはきょとんとした顔をして、「そんなの当たり前じゃない」と言うのだ。
「詳しい理由もなく、ただ向こうへ行ってはいけないだなんて、不思議だと思わないの?」
「だって、お母さんも言ってたし」
「決まり事は決まり事なんだから、守るのが当たり前でしょ?」
「どこが不思議なの?」
誰にも理解してもらえなかった。
——そんな日々を思い返しながら、穂詩歌はぼんやりと歩き続けていた。
大人になったらわかるのかな。
でも、大人になるまでこのままでいいのかな。
そんなことをモヤモヤと考えて歩いていると、ふっと足元が明るくなった気がした。
あれっと思って空を見上げると、雲間からほっそりとした月が姿を現していた。
まるで空を旅する舟みたい……そう思った次の瞬間、月の周りの雲がサーっと流れていき、煌めく星々が空一面に広がった。
宝石箱をひっくり返したかのようなその景色に、穂詩歌の瞳もキラキラと輝いた。
——天の川だ! 綺麗……!
穂詩歌は途端に、広い宇宙の片隅に一人放り出されたような気持ちになった。
この幾千もの星のどこかに織姫様がいて、またどこかに彦星様がいて。
お互いに見つけることは出来るんだろうか。
こんなに空は果てしないのに。
そして穂詩歌。私はここにいる。
二人のように、誰かを探しているんだろうか? こんなにたくさんの星の中から、たった一つの"何か"を見つけることなんて——。
そこまで考えて穂詩歌はハッとした。
まるで今さっき、雲間がサーッと開いて月が現れた時のような、一筋の光がスッと全身を貫いた。
そうだ。私はまだ知らない。
この世界はきっともっと大きくて広くて果てしない。
きっとそうなんだろうって心のどこかで思っていたけど、この村の中でその思いはないものとして押し込められてしまっていた。
でも、そう、本当は私……
「——世界を知りたい!」
ギュッと手に力を込めて、短冊に刻んだ。
誰にも知られず、天には届くように。
穂詩歌は近くに大きな木を見つけて、そのなるべく高いところにくくりつけようとした——その時だった。
キラッと一瞬空が光ったかと思うと、サッと美しい光が尾を引いていった。
「流れ星っ!!」
穂詩歌がそう声を上げたのも束の間、次の瞬間、
——ドーーーーーンッ!!!
というものすごい音が耳をつんざいた。
びっくりして音がした方を振り返ると、森の少し奥、木々の間からぼんやりと光がもれている。
ゆらゆらと揺れているような、今にも消えそうにも見えるその妖しい光を眺めながら、穂詩歌は胸が高鳴るのを感じていた。
——一体何が起きたんだろう? もしかして、魔法の扉が開いたとか……!
考えれば考えるほどワクワクしてきて、気づけばその光を目指して走り出していた。
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